Q.定期昇給やベースアップは必ず実施しなければならないか?

  • 2017.08.28 Monday
  • 10:12

A.就業規則や労働協約で具体的な定めをした場合、実施する義務が発生します

 

年に一度、賃金額の改定を実施している企業も多いのではないでしょうか。

この賃金改定の際、定期昇給やベースアップは毎年必ず実施しなければならないのでしょうか?

 

定期昇給やベースアップを使用者が法律上義務付けられるのは、就業規則や労働協約で具体的な義務を負っている場合です。

具体的な義務とは、アップする金額やアップ率等の基準を具体的に設定している場合が該当します。

 

単に、「毎年4月1日に定期昇給させる」とある場合には抽象的な義務にとどまります。

この場合、使用者に定期昇給を実施する義務はありますが、金額を使用者が決定しない限り、賃金の請求権とはなりません。

 

また、「定期昇給させることがある」とだけ定めている場合は、努力義務にとどまり、抽象的な義務にもなりません。

このような場合には、定昇やベアの凍結もありえます。

 

賃金は上がり続けることが可能であれば、それに越したことはないかもしれません。

しかしながら、経営環境は大きく変化し続けます。

今一度、就業規則の条文を確認してみてはいかがでしょうか。

 

Q.完全出来高払い制は違法か?

  • 2017.07.14 Friday
  • 08:30

A.一定額の保障給を定めない場合は違法となります

 

労働基準法では、「出来高払制その他の請負制で使用する労働者については、使用者は、労働時間に応じ一定額の賃金の保障をしなければならない」と定められています。

出来高払い制による賃金の定め方自体を禁止しているわけではありませんが、完全出来高払い制として保障給を設けない定め方を、違法として禁止しています。

 

出来高払い制は、繁忙期には多くの収入を得られるなど、労働者にとっても大きなメリットがありますが、反面、繁忙期でない時期には極端に収入が減少してしまうというデメリットも存在します。

そのため、出来高払い制の場合には、労働者の収入が著しく不安定になり、生活の安定が損なわれる可能性があります。

そのため、労基法では労働者保護のため、一定額の保障給を定めることを求めています。

 

では、この保障給、どのくらいの水準が必要なのでしょうか?

 

労基法では、保障給の範囲は何割でなければいけないと明白な定めはされていません。

ただし、過去の通達をみると、以下のように示されています。

 

「実質賃金をあまり隔たらない程度の収入が保障されるように、保障給の額を定めるように指導すること」(昭22・9・13基発17号)

「賃金構成からみて、固定給の部分が賃金総額の大半(概ね6割程度以上)を占めている場合には、右条文の『請負制で使用する』には該当しない」(昭63・3・14基発150号)

 

固定給(保障給)部分が、出来高払い部分を含んだ賃金総額の6割以上を占める場合は、そもそも出来高払い制に該当しないということですね。

つまり、出来高払い制の保障給は、賃金総額の6割程度と考えておけば間違いないでしょう。

 

なお、この保障給は、労働者が実際に出勤して働いた場合のものであり、出勤しなかった時間や欠勤日についてまで賃金保障する必要はありません。

 

Q.台風で従業員が遅刻、賃金は払わなくてOK?

  • 2017.07.11 Tuesday
  • 08:30

A.遅刻した時間については、賃金支払い義務はありません。

 

大型台風の発生や、突然の大雪の影響で公共交通機関がストップ。

結果として、多くの従業員が始業時刻に間に合わず遅刻する。

最近、よくある光景ですね。

 

このような場合、遅刻した従業員に賃金を支払う必要があるのでしょうか。

 

この問題を考える上で大原則となる考え方を解説したいと思います。

それは、「ノーワーク・ノーペイの原則」です。

 

労働契約は、労務を提供し、賃金を支払うという有償、双務契約です。

したがって、労務の提供がない以上「賃金を下さい」という賃金請求権は発生しないのが原則であり、これをノーワーク・ノーペイの原則といいます。

そこで、労働契約で労働すべきことが定められている日である所定労働日に欠勤、遅刻、早退などで労働できなかったときは、一般に労働者の都合による労働契約の不履行に該当し、労働の対価たる賃金の請求権が発生せず、使用者の支払義務もなくなります。

すなわち、労働者が遅刻、早退、私用外出等により提供すべき労務を提供しなかった時間がある場合にその時間に応じて賃金を減額することはノーワーク・ノーペイの原則から適法となります。

 

では、問題のように、天災事変等で出勤できない場合のような、労働者にも使用者にも責任のない不可抗力による契約の履行不能の場合の賃金支払いについてはどうでしょう。

 

この場合は、民法の危険負担の原理によって解釈され、かかる不可抗力的な場合にはその負担は、「債務者負担」が原則であるから、労務提供の債務を負う労働者が不可抗力によって提供できなかった以上、その損失は労働者が負担することになり、賃金の支払いは受けられないということになります。

 

ただし、交通ストなどについて使用者が賃金保障する旨の特別の定めをすればそれによりますのでご注意ください。

 

Q.賃金支払い5原則、例外は?

  • 2017.06.14 Wednesday
  • 09:33

A.一定要件にて例外も認められています

 

賃金は労働者の生活の糧であり、それが確実に労働者に支払われなければ大きな支障が生じます。

そこで、労働基準法では賃金の支払いについて、

 

「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない」(第24条1項)

「賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」(同条2項)

 

と定められており、

 


 

〇通貨払い

〇直接払い

〇全額払い

〇毎月1回以上払い

〇一定期日払い

 


 

の5原則を定めています。

ただし、この原則にも例外があります。

 

…眠瀛Гい慮饗А ΑΑΑ仝座払いの例外

 

賃金は現金で支払わなければなりません。

小切手や現物で支払うことは労働協約の定めがないと違法となります。

ただし、賃金の銀行等の口座振り込み払いは認められています。

 

銀行等の口座振り込み払いも現金手渡しではないので、従来は違法として禁止されていましたが、「使用者は、労働者の同意を得た場合には、賃金の支払いについて当該労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者の預金又は貯金への振り込みの方法によることができる。」と規則が定められ、昭和63年4月1日から正式に認められるようになりました。

 

実施要件は、

  • 本人の同意(形式は問わず、口座指定書の提出でもよい)にもとづき
  • 本人名義の口座(妻や子名義は不可)に、
  • 賃金支払い日の午前10時頃までに払い出し可能なように実施する必要がある

とされています。

 

なお、本人名義の口座であるなら、本人が口座振り込みを希望する賃金の範囲や金額等を指定して複数の口座へ振り込み支払いを行うことも有効です。

一方、給料日の当日に銀行に払い込んだり、本人の希望であっても別人や架空の名義に振り込んだりするのは違法となりますのでご注意ください。

 

 

直接払いの原則 ・・・ 代理受領の禁止

 

賃金は直接労働者本人に支払わなければならず、代理人に支払うことは違法であり、同僚や本人の債権者などに支払っても無効なので、本人から再度請求があれば二重払いの危険が使用者にあります。

ただし、本人の支配下にあると認められる妻や子が、本人の印鑑を持参し、本人名義で受領した場合には、本人の代理人ではなく使者への支払いとして適法となります。

 

 

A干枴Гい慮饗А ΑΑΑ々欺協定の例外

 

賃金は全額を支払わなければなりませんが、税金や社会保険料等法令で定められたものは、逆に使用者に源泉徴収義務があるので、控除は適法となります。

このような法令で定められていないものでも、従業員の過半数組合や過半数代表者と「賃金控除協定」を書面で結んで、それに定められた項目に該当するものを控除する場合には適法となります。

この場合の項目としては、例えば、組合費、給食券代、売店の購入代金等が考えられます。

なお、この「賃金控除協定」の労働基準監督署への届出は不要となっています。

 

 

に莊酳Гい慮饗А ΑΑΑ[彁賃金の例外

 

賃金は毎月1回以上支払わなければならず、年俸契約のときも労基法の労働者である限りは、毎月に分割払いしなければなりません。

ただし、年棒の先払いは認められており、例えば、半年分や3か月分等をまとめて支払うことは認められています。

また、当然ではありますが、賞与や臨時の賃金は例外となっています。

 

 

グ貭蟯日払いの原則 ・・・ 繰上げ払いの例外

 

賃金は毎月一定の期日に支払わなければなりません。

ただし、繰上げ払いや、1回払いを2回に繰上げ分割することは臨時的措置の場合ならば差し支えないとされています。

 

 

毎月、当たり前のように支払っている賃金。

基本的な原則と例外は、押さえておきたいものですね。

 

 

Q.懲戒解雇などの場合の退職金不支給は違法か?

  • 2017.06.01 Thursday
  • 13:55

A.永年の勤続の功を抹殺してしまうほどの不信があれば適法

 

退職金は、労働基準法上は原則として賃金には該当しません。

しかしながら、労働協約、就業規則、労働契約等によってあらかじめ支給条件の明確なものは賃金に該当します。

したがって、退職金であっても支給条件が明確にされ、労働者が権利として請求しうるものは賃金に該当します。

 

賃金に該当するならば、懲戒解雇だからといって退職金を支給しないのは、制裁としての不支給であるから労基法第91条(減給の制裁)、また、同法第16条(賠償予定の禁止)、同第24条(賃金全額払いの原則)に抵触して違法とならないかが問題となります。

 

判例では、下記のように示しています。

 

〇退職後の同業他社への就職を理由に退職金を半分とした事案(昭和52.8.9最高裁判決 三晃社事件)

「被上告会社が営業担当社員に対し退職後の同業他社への就職をある程度の期間制限することをもって直ちに社員の職業の自由等を不当に拘束するものとは認められず、したがって、被上告会社がその退職金規則において右制限に反して同業他社に就職した退職社員に支給すべき退職金につき、その点を考慮して、支給額を一般の自己都合による退職の場合の半額と定めることも、本件退職金が功労報償的な性格を併せ有することに鑑みれば、合理性のない措置であるとすることはできない。すなわち、この場合の退職金の定めは、制限違反の就職をしたことにより勤務中の功労に対する評価が減殺されて、退職金の権利そのものが一般の自己都合による退職の場合の半額の限度においてしか発生しないこととする趣旨であると解すべきであるから、右の定めは、その退職金が労働基準法上の賃金にあたるとしても、同法3条、16条、24条及び民法90条等の規定にはなんら違反するものではない。」

 

また、商品販売の責任者が会社商品を持ち出し、隠匿した行為は懲戒解雇に相当すると認められ、企業秩序のみならず社会秩序に反する行為であって、会社の社会的信用を著しく損なうものであり、勤続の功労を抹消するほどの著しく信義に反する行為であるから、就業規則の規定により退職金不支給は不当ではないという判例もあります。(平成9.4.25大阪地裁判決 日本電信電話事件)

 

懲戒解雇に該当する事由にもよりますが、永年の功労を無にするような行為であれば、退職金不支給も可能ということですね。