Q.パートタイマーの就業規則はパートタイマーの意見のみを聴けばよいか?

  • 2017.01.31 Tuesday
  • 11:07

A.パートタイマーを含めた事業所の全労働者の過半数代表者の意見聴取が必要です

 

パートタイマー用の就業規則を作成・届出する場合にも、従業員代表の意見聴取ならびに意見書の添付が必要となります。

この場合の従業員代表ですが、就業規則の対象となるパートタイマーに限る必要はありません。

 

労働基準法では、就業規則作成時の意見聴取について、下記のように定めています。

 

「使用者は、就業規則の作成又は変更について、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならない。」

 

この場合の「労働者の過半数を代表する者」とは、その事業場に在籍するパートタイマーも含めた全労働者の過半数代表を指します。

したがって、過半数代表者に関しては、パートタイマーを選出する義務はなく、パートタイマー用の就業規則が適用されない正社員であってもなんら問題ありません。

 

逆に、パートタイマー就業規則だからパートタイマーのみ、臨時従業員就業規則だから臨時従業員のみ、正社員就業規則だから正社員のみのそれぞれの過半数代表者の意見聴取(意見書)ということでは不適法となり、労基署長よりその届出の受理を却下されます。

 

その理由は、パートタイマーのみに適用される「パートタイマー就業規則」であれ、定年後再雇用者のみに適用される「嘱託就業規則」であっても、その事業場全体としてみれば一部労働者の就業規則として全体の就業規則の一部を構成するにすぎないからです。

そこで、意見の法定の聴取者は、あくまでも前述の事業場全体の労働者を基礎として選出された過半数代表者ということになるのです。

 

ちなみに、パートタイム労働法では下記のように規定され、適当な方法でパートタイマーの代表者の意見を聴くよう努力義務を課しています。

 

「事業主は、短時間労働者に係る事項について就業規則を作成し、又は変更しようとするときは、当該事業所において雇用する短時間労働者の過半数を代表すると認められる者の意見を聴くように努めるものとする」

 

パートタイマーの過半数代表者については、法定の意見聴取者ではないが、できるだけその意見を反映させることが望ましいということですね。

Q.パート用の就業規則がないと正社員の就業規則が準用される?

  • 2017.01.30 Monday
  • 10:32

A.必ずしも準用されないが、無用なトラブルも予想されます

 

労働契約法では、労働契約と就業規則の関係について、下記のように定めています。

 

「就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において無効となった部分は、就業規則で定める基準による」(労働契約法第12条)

 

つまり、就業規則で定める基準を下回る労働条件を、パートタイマーとの雇用契約で決めても、それは無効となって就業規則で定める基準で契約したものとみなされて取り扱われるのではないかといったトラブルが予想されます。

 

例えば、パートタイマーについて退職金や賞与を支給しない旨を定めて、本人も同意の上で労働契約書に署名していたとしても、退職金や賞与の支給がない旨を定めたパートタイマー用の就業規則がなく、正社員の就業規則のみしか作成しておらず、そこでは退職金や賞与の支給が定められているときは、そのようなパートタイマーの契約は就業規則に反する労働契約となって無効となり、退職金や賞与を正社員と同じように支給しなければ違法となりかねないということです。

 

判例でも、「社員」に対する就業規則のみがあって、「日雇」に対する就業規則が制定されていない場合について、「社員就業規則を日雇いに準用すべきである」(昭和41.5.27 横浜地裁決定・日本ビクター事件)と判示されています。

 

しかしながら、実態としては必ずしも準用されるとは限りません。

 

そもそも、就業規則の記載内容が労働条件として効力を発揮する要件として、「合理的な労働条件」であることが求められています。

この場合の「合理的な労働条件」とは、パートタイマーについてはパートタイマーとしての雇用態様、勤務形態、職務内容、業務上の地位や処遇体系等に合致したものをいうと解され、少なくとも雇用形態の異なる非正規雇用であるパートタイマーに正社員の就業規則を適用することが合理的であるとは解されないからです。

 

直ちに準用されないからといっても、前述のようなトラブルを招くおそれがあるので、少なくとも就業規則の中に「正社員のみに適用する」とか「この就業規則は、パートタイマー、契約社員、嘱託等には適用しない」といった条項を定めておく必要があるでしょう。

 

もちろん、パートタイマー用の就業規則を定めておくことが最良であることは言うまでもありませんが。

Q.パートタイマー用の就業規則を別に作らなければ違法か?

  • 2017.01.27 Friday
  • 09:53

A.常時10人以上の労働者を使用する場合は、原則として違法となります

 

労働基準法では、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成して所轄労基署長に届け出ることが義務付けられています。

そこで、パートタイマーも含めて常時10人以上の労働者を使用する事業場の場合には、前述の規定によって就業規則の作成・届出義務が生じます。

また、すでに正社員についての就業規則を作成して届け出ている使用者であっても、パートタイマーを雇用し、その者については正社員の就業規則を適用しないのならば、別に「パートタイマー就業規則」を作成して届け出なければ法違反となります。

 

その理由は、常時10人以上の労働者を使用する事業場でありながら、「適用される就業規則のない労働者」がいることは、その者について就業規則が作成されていないことになるからです。

パートタイマーも含めて「一人でも適用される就業規則のない労働者がいる」ということは労基法違反になります。

常時10人以上の労働者を使用する使用者は「常時使用する労働者」のみに限らず、労基法上の全ての「労働者」について実態に応じた各就業規則を作成する義務があるということです。

 

新たに策定された「労働時間の適正把握のためのガイドライン」

  • 2017.01.26 Thursday
  • 17:21

昨年12月27日更新のブログにて、長時間労働に対する行政の指導がより厳格化されることを紹介しました。

 

2016年1月27日更新:厳格化される長時間労働に対する行政指導

http://sr-komaya.jugem.jp/?eid=45

 

その中で触れた、使用者向けの「労働時間の適正把握のための新ガイドライン」が、1月20日に策定されました。

今までも、同様の趣旨の通達がありましたが、今回の新ガイドラインは更に踏み込んだ内容となっています。

中でも、注目すべき点を下記に紹介します。

 


〇労働時間の考え方

労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいい、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たる。そのため、次のアからウのような時間は、労働時間として扱わなければならないこと。(中略)

 

ア.使用者の指示により、就業を命じられた業務に必要な準備行為(着用を義務付けられた所定の服装への着替え等)や業務終了後の業務に関連した後始末(清掃等)を事業場内において行った時間。

イ.使用者の指示があった場合には即時に業務に従事することを求められており、労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間(いわゆる「手待時間」)。

ウ.参加することが業務上義務付けられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間。

 


 

上記のように、新ガイドラインでは「業務上必要な研修・教育訓練・学習等」を行っていた時間も労働時間であると明記しています。

 

次に、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置」についてです。

簡単に言えば、タイムカードや出勤簿等にて適正に労働時間を記録しなさいという内容ですが、今回のガイドラインでは『自己申告制』のケースに多くの項目を設けています。

 


〇自己申告制により始業・終業時刻の確認及び記録を行う場合の措置

自己申告制によりこれを行わざるを得ない場合、使用者は次の措置を講ずること。

 

ア.自己申告制の対象となる労働者に対して、本ガイドラインを踏まえ、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと。

 

イ.実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用を含め、本ガイドラインに従い講ずべき措置について十分な説明を行うこと。

 

ウ.自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。

 特に、入退場記録やパソコンの使用時間の記録など、事業場内にいた時間の分かるデータを有している場合に、労働者からの自己申告により把握した労働時間と当該データで分かった事業場内にいた時間との間に著しい乖離が生じているときには、実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること。

 

エ.自己申告した労働時間を超えて事業場内にいる時間について、その理由等を労働者に報告させる場合には、当該報告が適正に行われているかについて確認すること。

 その際、休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には、使用者の指示により業務に従事しているなど使用者の指揮命令下に置かれていたと認められる時間については、労働時間として扱わなければならないこと。

 

オ.自己申告制は、労働者による適正な申告を前提として成り立つものである。このため、使用者は、労働者が自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設け、上限を超える申告を認めない等、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと。

 また、時間外労働時間の削減のための社内通達や時間外労働手当の定額払等労働時間に係る事業場の措置が、労働者の労働時間の適正な申告を阻害する要因となっていないかについて確認するとともに、当該要因となっている場合においては、改善のための措置を講ずること。

 さらに、労働基準法の定める法定労働時間や時間外労働に関する労使協定(いわゆる36協定)により延長することができる時間数を遵守することは当然であるが、実際には延長することができる時間数を超えて労働しているにもかかわらず、記録上これを守っているようにすることが、実際に労働時間を管理する者や労働者等において、慣習的に行われていないかについても確認すること。

 


 

以上のように、労働時間の自己申告制については、かなり細かい内容が記されています。

電通をはじめとする大企業において、記録上の労働時間と実態との乖離が非常に大きく、この点について行政も厳しく指導を行う姿勢が伺えますね。

 

なお、このガイドラインは大企業だけでなく、労働者を使用するすべての事業場が対象です。

労働基準監督署の指導も、原則として、このガイドラインの内容に沿って行われます。

今一度、自社の労働時間管理の状況を確認してみてはいかがでしょうか。

 

ガイドラインの詳細は、下記のサイトでご覧いただけます。

 

http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/151106.html

 

昨冬の年末賞与、ほぼ横ばい〜平成28年民間主要企業年末一時金妥結状況より〜

  • 2017.01.25 Wednesday
  • 10:19

経団連・連合のトップ会談が2月初旬に行われる予定です。

いよいよ今年の春闘がスタートします。

昨年同様に、今年の春闘も賃上げが大きなテーマとなっています。

 

そんな中、厚生労働省では「平成28年民間主要企業年末一時金妥結状況」を取りまとめ公表しました。

集計対象は、妥結額などを継続的に把握できた、資本金10億円以上かつ従業員1,000人以上の労働組合のある企業336社となっています。

大企業の状況であると理解して差し支えないでしょう。

 

 

平均妥結額は830,609円で、平成20年以来8年ぶりの高水準となっています。

前年に比べ175円(対前年比0.02%)の微増です。

わずかながらの増加ですが、対前年比プラスは4年連続となります。

 

民間の調査結果等をみても、賞与の状況は、ほぼ頭打ちの感がありますね。

 

 

結果の詳細は、下記のサイトでご覧いただけます。

 

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000148687.html

 

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