Q.改正した就業規則は遡って適用できる?

  • 2017.03.31 Friday
  • 08:30

A.従業員に不利益な内容は「同意」がなければ適用できません

 

就業規則の改正が効力を生ずる時期は、原則として、それが周知された時となります。

そして、その改正就業規則に「施行期日」が定められていれば、その期日の到来した時から適用となります。

 

では、遡って適用する遡及適用期日を定めた場合に、その就業規則は有効となるでしょうか?

 

結論からいうと、従業員にとって不利益な内容であれば、従業員の同意がない限り無効となります。

 

過去の判例でも、下記のように示しています。

「既に退職願いを出している原告らに対し、報復的な意図の下に、密かに右懲戒解雇による退職金不支給規定を急遽新設する就業規則の変更を行い退職金の支給義務を免れようとしたものであると認められるので、本件新規定は原告らとの関係でその効力がない」(大阪高裁判決 日本コンベンションサービス事件)

として、該当する退職者への就業規則の適用を否定しています。

 

一方、従業員の利益となる遡及は有効となります。

「労基法第93条は就業規則に法規範的効力を認め、就業規則の変更が従来の労働条件の基準を引き上げるものであれば、労働者の同意なしに労働契約の内容を変更する効力を認めている」(昭和46.9.13東京地裁判決 日本貨物検数協会事件)

 

従業員に利益となる就業規則の遡及改定は、同意も必要なく適用されることになります。

 

Q.従業員代表の意見を聴いていいない就業規則、これって無効?

  • 2017.03.30 Thursday
  • 08:30

A.就業規則の内容を周知していれば有効

 

労働基準法では、就業規則の作成・変更について従業員側の意見聴取を定めています。

当然のことですが、この意見聴取を怠れば労働基準法違反となり、罰則が科されます(30万円以下の罰金)。

 

しかしながら、従業員代表等の意見聴取を行っていない就業規則でも、その効力については有効であると認められています。

 

判例でも、下記のように示しています。

「労働基準法においても規則変更につき組合が同意ぜず反対意見を付した場合であってもその意見が拘束力を有するものではなく。これが協議を経なかったとしても・・・(中略)規則変更が無効となるものと認めることはできない。」

 

そもそも就業規則は、使用者が一方的に作成し、変更する権限を持っています。

ですので、たとえ従業員代表等の意見聴取手続きをとっていない就業規則であっても、従業員に何らかの方法で就業規則として周知され、就業規則として適用されている以上は、それが労基法の意見聴取手続き違反となることは別として、それを理由に就業規則としての効力が否定されることにはならないということです。

 

とはいうものの、

 

ちゃんと意見聴取をしてくださいね。

 

「働き方改革実行計画」政府が公表

  • 2017.03.29 Wednesday
  • 13:26

政府は、3月28日、働き方改革実現会議を首相官邸で開催し、長時間労働の是正や同一労働同一賃金の導入を盛り込んだ「働き方改革実行計画」を取りまとめました。

 

 

計画書では、下記のようにテーマと対応策、さらに実現に至るロードマップが示されています。

 


 

1.非正規雇用の処遇改善

〇同一労働同一賃金の実効性を確保する法制度とガイドラインの整備

〇非正規雇用労働者の正社員化などキャリアアップの推進

 

2.賃金引上げと労働生産性向上

〇企業への賃上げの働きかけや、取引条件改善・生産性向上支援など賃上げしやすい環境の整備

 

3.長時間労働の是正

〇法改正による時間外労働の上限規制の導入

〇勤務間インターバル制度導入に向けた環境整備

〇健康で働きやすい職場環境の整備

 

4.柔軟な働き方がしやすい環境整備

〇雇用型テレワークのガイドライン刷新と導入支援

〇非雇用型テレワークのガイドライン刷新と働き手への支援

〇副業・兼業の推進に向けたガイドライン策定やモデル就業規則改定などの環境整備

 

5.病気の治療、子育て・介護等と仕事の両立、障害者就労の促進

〇治療と仕事の両立に向けたトライアングル型支援などの推進

〇子育て・介護と仕事の両立支援策の充実・活用促進

〇障害者等の希望や能力を活かした就労支援の促進

 

6.外国人材の受入れ

〇外国人材受け入れの環境整備

 

7.女性・若者が活躍しやすい環境整備

〇女性のリカレント教育など個人の学び直しへの支援や職業訓練などの充実

〇パートタイム女性が就業調整を意識しない環境整備や正社員女性の復職など多様な女性活躍の推進

〇就職氷河期世代や若者の活躍に向けた支援・環境整備の推進

 

8.雇用吸収力の高い産業への転職・再就職支援、人材育成、格差を固定化させない教育の充実

〇女性のリカレント教育など個人の学び直しへの支援や職業訓練などの充実

〇転職・再就職者の雇用機会拡大に向けた指針策定・受け入れ企業支援と職業能力・職場情報の見える化

〇給付型奨学金の創設など誰にでもチャンスのある教育環境の整備

 

9.高齢者の就業促進

〇継続雇用延長・定年延長の支援と高齢者のマッチング支援

 


 

上記の9つのテーマとそれに伴う対応策に沿って、4月以降にさらに具体的な議論が進められる予定です。

また、併せて、必要な関連法案の提出、法律の改正が予定されています。

 

この実行計画は、別添資料も含めて79ページと膨大な内容となっています。

今後、本ブログでも少しづつですが、詳細を解説したいと思います。

 

計画書の詳細は、下記のサイトでご覧いただけます。

 

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/dai10/siryou1.pdf

 

副業・兼業はモチベーション向上や人材確保・定着で効果的〜2017年度の雇用動向に関する企業の意識調査より〜

  • 2017.03.28 Tuesday
  • 10:37

政府が検討している「働き方改革」。

兼業や副業の推進も、大きなテーマのひとつになっています。

 

帝国データバンクでは、3月14日に、2017年度の雇用動向に関する企業の意識調査の結果を取りまとめました。

その中で、副業や兼業を認めることの効果についての調査結果が公表されています。

 

 

以下、調査結果からの抜粋です。

 


 

〇従業員の副業・兼業を認めることによる効果では、従業員の「定着率が向上した」が26.6%で最高。

〇次いで、「従業員のモチベーションが高まった」「従業員のスキルが向上した(本業に貢献)」「多様な人材の活躍が推進できた」「継続雇用が増加した(リタイア後の再雇用など)」が続いた。

〇従業員の副業・兼業を認めることで、労働意欲や人材確保・定着の面で効果的と捉えている。

 


 

副業・兼業による過重労働や、企業機密の漏洩等のリスクを考慮すると、推進することに踏み込めないテーマです。

反面、活用することによって上記のようなメリットがあることは一考に値しますね。

 

なお、本調査では、正社員・非正規社員の採用動向についても公表しています。

 

 


 

〇正社員の採用予定があると回答した企業の割合は64.3%と、3年連続で6割を超え、過去10年で最高水準。

〇特に「大企業」(83.8%)の採用意欲が高く、調査開始以降で最高を更新。

〇「中小企業」(59.0%)の採用予定も2年ぶりに上昇し、正社員の採用動向は上向き状況。

 

〇非正社員の採用予定があると回答した企業の割合は47.6%で2年連続の減少となり、非正社員に対する採用意欲はやや弱まった。

〇しかし、非正社員が人手不足の状態にある「飲食店」「旅館・ホテル」「娯楽サービス」は8割を超える企業で採用を予定。

 


 

深刻な人手不足を背景に、大企業を中心に優秀な人材確保に躍起になっている状況が伺えますね。

 

 

調査結果の詳細は、下記のサイトよりご覧いただけます。

 

http://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p170304.html

 

賃上げの勢いに一服感〜連合「2017春季生活闘争第1回回答集計結果について」より〜

  • 2017.03.27 Monday
  • 10:17

近年、春闘では、ベースアップを含む賃上げ要求が多くの労組からあがっています。

3月15日の企業からの集中回答を受けて、連合では、3月17日時点での回答集計結果を取りまとめました。

結果をみると、事前の予想通り、賃上げの勢いが昨年と比べ弱くなっている状況が判明しました。

 

 

集計結果の概要を抜粋すると、下記の通りです。

 


 

〇集計結果は6,270円:2.06%(昨年同期比▲71円・▲0.02ポイント)であった。300人未満は5,139円:2.06%(同▲87円・▲0.01ポイント)であり、率では全体に等しく、規模間格差は縮小している。

〇非正規労働者の賃金引上げは、単純平均で時給23.65円(同▲2.30円)・月給5,359円(同284円)となっており、正規を上回る改善を果たしている。

〇賃金以外でも、所定労働時間の短縮や非正規労働者の処遇改善などが実現している。

 


 

賃上げの傾向は、4年連続で改善しており、正規・非正規や大企業・中小企業間の賃金格差は縮小している傾向です。

しかしながら、前年同期比でみると、全体で0.02ポイント減少となっており、ほぼ横ばいの状況です。

世界的な経済情勢が不透明な中で、企業も大幅な賃上げ傾向を継続させることには、慎重な姿勢をみせているようです。

今後は、賃上げ以外の要素、いわゆる「働き方改革」が労使交渉の主役になるかもしれませんね。

 

集計結果の詳細は、下記のサイトでご覧いただけます。

 

https://www.jtuc-rengo.or.jp/activity/roudou/shuntou/2017/yokyu_kaito/press_release_201670317.pdf

 

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